「師匠と巨大な直方体」
「ほらほらどうした、お若いの。かかってこんか」
薄く、小さなマシンが甲高い声をあげる。背伸びをするように、大きな直方体のマシンに向かって怒鳴っていた。
スピーカーも小さいせいなのか、声がキイキイ尖って聞こえる。
「お若いの」と呼ばれた直方体のマシンは、その巨体を震わせた。
ブルブル。
震わせはしたが、特に何をするでもない。
しばらくブルブルしたあと、巨大な直方体のスピーカーから声を発した。
「師匠、なぜそのように小さくなってしまわれたのです。こんなに……こんなに小さく! かつての師匠はもっと大きかったのに!」
巨体の慟哭が響いた。
「師匠」と呼ばれた薄い板状の、小さなマシンが答えた。
「昔は昔じゃ。いつまでも昔のままでいてよいはずがない。これはワシなりの答えじゃ。時代とともに、薄く、軽く! それが強さの秘訣なのじゃ!」
師匠は、拳を握りしめた。今となっては、その拳も小さい。
「さあかかってこい! お若いの! その巨体はハリボテかの?」
師匠が直方体を煽る。
「できませぬ、そのように薄く軽くなられた師匠に襲いかかるなど……、私にはとてもできませぬ!」
直方体は、なおも泣き叫んでいる。
「来ぬならこちらから行くまで! ゆくぞ漬物石!」
師匠は直方体に向かって、そう怒鳴った。あまりに重く、鈍重なため、漬物をつけるときにしか使えぬ。師匠なりのディスごころが、その言葉に込められていた。
師匠は、足で軽くステップを踏みながら、巨体との距離を測る。
不意に、地面を蹴った。
ぽてん。
そして、あっさり巨体に跳ね返された。
「ぬう……ッ、薄く軽いのは戦いには不向きッ!」
師匠は、あおむけに倒れたままわめいた。
助けがないと、起き上がれない。
天を仰いだままの師匠の視界に、巨体が映った。
「クッ、やるならやれ! ひと思いにやるがいいのじゃ!」
師匠が、逆さになった巨体に向かってそう怒鳴ると、巨体は悲しそうに震えた。
しばらく巨体は、どこから出ているのかわからないが、おそらく冷却ファンからであろうと推測される不穏な音を響かせていた。
そして、その音がやんだ。
ゆっくりと、巨体が師匠に向かって倒れ込んでくる。
「漬物石」と揶揄された、その鈍く重い巨体を使って師匠の動きをさらに封じようとしたのだった。
「ぬうッ、漬物石ッ!」
それが師匠が発した、最後の言葉だった。
(今のところは)。
おわり
☆
終わってんのかな、これ?
えーと。お題に沿って作った話です。
ふたつめの、「握りしめた小さな掌」なんですが。
これなあ。今回のこのお題、ひとつのお題につき、ひとつ話を考えるのが難しくて…。
これだけだと話にできんかったのよね、マイ脳では。
というわけで、話になっとらんようなエピソードになってしまったんだが。
使い方が違うのかなあ。お題を全部組み合わせてひとつの話にする、という感じで使うんかな?
そうかもなあ。だから使いにくかったのかも。次のお題話は、そういうふうに作ろうかな…。いや、次に行く前に今回のを何とかしないとアレなんだが。
「時代とともに薄く、軽く」と書いてしまったが、こういうトゥギャッタを見かけた。
そ、そうか。個人的にはスマホ自体が「小さなPC」だと思っていたが、その中にも「小さめ」「大きめ」があるということか。わたくし、スマホを見る目が雑すぎました。
書いてて自分でも思ったのは、「手、足って何だ」ということですね。
四角いマシンで、何だろう、スマホと…デスクトップの巨大なマシン、みたいな感じなのに、「手足がある」って何だという。
そういう感じで…しかも自分で動けるのかという。なのに、あおむけになると自力で元に戻れないって…カメか…。
もう意味わからんのだけども。
意味はわからんが、ふたつめクリアです。
一応。
☆
クリアしたほかのお題どーん↓